"山形から来ました自営業でSIerをやってます武田ソフトです" は起業して10期目に入りました。
10年前は、「こういう形態の同業者がこれから増えるはずだ!」 と確信していましたが、・・どうなんでしょうか?
タイトルのような質問を受けることがまれにあるので、自分のまとめのために思い付きで列挙する感じですが、似たようなスタイルを模索している方との会話になればうれしいです。
私自身は、ソフトハウス~大手SIerで10年くらい経験してから起業しています。プロジェクトのスケジューリング・マネージメント、自分が作ったものへの危機管理(臭覚みたいなもの)、などは身に染みついてはいるようです。やばいプロジェクトでも寝込んだりしたことはないので、心身は強い方だと思います。
今さらいうまでもなく、OSS・コミュニティやレンサバ・クラウドさまさまで、こんな時代だからこそ出来てる商売だと思っています。
ターゲットにしているのは、お金があるわけじゃないけどITシステムに挑戦したい、という小規模事業・スタートアップ事業です。山形の企業を最優先しています。
1プロジェクトの価格帯は、数万~100万くらい。1家族くらすために年に何件くらい請けるべきかを考えると、結構ハードかもしれません。
基本的に人月で見積・請求しています。単価は一般的な中堅エンジニアの末端価格程度です。
おそらく弊社は、一般的なSI企業の 5~10分の1くらいの費用で、同機能のシステムを提供できてると思います。
無謀な価格競争をしているわけでも、価格破壊しようとしてるわけでもありません。安さには理由があるんです!
ポイントは3つ。
○ 余計なもの(機能・ドキュメント)は作らない。
スタートアップで一番大事なのは、「余計な機能を作らない」ことかなと思います。これが意外と難しい。
お客さんもお客さんで、ITチャレンジにテンション高くなってることが多く、躍起になっていろんな便利機能やボタンを詰め込んでくるものです。
「何が余計なのか」 「何が必要なのか」 を判断するためには、プロジェクトの目的や背景、企業理念まで遡ってヒアリングしないとわからなかったりします。
こういうヒアリングは、言ってみれば「起業家の夢物語」にじっくり耳を傾けることなわけですが、得意分野の話をしてもらうことで、お客さんのペースを取り戻してもらうという効果もあります。結果、冷静にITに関する議論が進むことが多いです。
お客さんに作ってもらった外部仕様(紙に描いた画面遷移の下書きみたいなもの)にも、わざと「こんなのいるんですか!?」みたいなダメ出しをして反応をみるときもあります。そこに描いた「ボタン1つに対する思い」をちゃんと確認して吸い上げる。という感じです。その上で、コチラからもっとすっきりとスリム化した案を出していく。
お客さんが「おおっー!」とうなってくれるのは、たいていが ”お客さんの意図するところを1クリックで解決” みたいなときです。実装する側としても、簡単な実装にこしたことないので、両者ホクホク。そういう瞬間を少しずつ積み上げていくのは楽しい。
で、主要と思われる機能の議論が終わったら、「あ、残りはお金かかりそうだから儲かったら考えましょう。」 で、納得の上、ばっさりと機能削除。
最初からこういう会話をする雰囲気を作ることが大事で、同じ投資額でも効果や満足度が全然違ってきます。
ヒアリングするかしないかの段階でさっさと、「カネいくら用意する気あるの?」という質問をぶつけます(もっと丁寧な言葉ですが)。実際いただける額ももちろん大事ですが、このプロジェクトにどれだけ本気かを見るためです。
もし本気なら事業計画や投資対効果など、起業家としての情熱的な指標を出してくるはずです。これがサクッと出てくるお客さんとは、その実現性に疑問があったり、初期投資が少額でも、まずは付き合い始めてみていいのではないでしょうか。
予算と要件が明らかにかけ離れているケースもあります。「10万でショッピングモールサイト作ってくれ」的な。「できません!」と即決するものもありですが、事業計画がちゃんと出来ていれば、かかった分を数年分割でも払ってくれるはずなので、まずは聞き出しましょう。それで計画も出てこなければ、ごめんなさいします。
「そもそもお金の話に抵抗を持ってしまう人は、起業は控えた方がいい」 とアドバイスしておきます。お金に謙虚に見える人ほど、自分をも周囲をも疲弊させているものです。
最初からごめんなさいするケースは、付き合いが長引くだけ、物理的・精神的に赤字になることが確定しているケースです。
「まずはビジネスを起こす」 ための心のバッファは用意しておきます。許容範囲もしっかり決めます。
例えば、「2週間分の工賃なら根に持たずに諦められる」など。この2週間分をバッファに、無料プロトや分割払いの計算します。
「10万じゃできないよ、ごめんなさい」で、ビジネスの芽を摘んでしまうか。
「じゃあ10万・頭金で、のこり20万・出世払いね!(・・もしのこり20万入ってこなくても諦められる、キリッ)」で、まずはビジネスを起こさせるか。
はっきりいって、10~20万なんて「ビジネスの数字」ではないと思うのですが、現実問題そのくらいでやるやらないをせめぎ合っているわけです。こういうときに背中をポンと押せるようなSIerでありたい。
ただし、自分のモチベーションには素直になりましょう。やりたくないと感じたらごめんなさいしないと不健康になります。また、許容範囲は絶対に越えてはいけません。
「社員募集してませんか?」という問合せも数年前はありました。そのころはぼんやりと、法人成りや雇用も考えていましたが、今はまったく考えていません。
SIerを大きくすると、みなさんお悩みの「よくない側面」がどうしても現れてしまうが、自分ではそれを解決できる気がしない。あと自分は、自分と家族が大事すぎて、社員の生活を支えるとかそういうことを考えられる器ではない。
でもキャパシティ増やさないと、世間の機会損失を救えない。
・・・などと、もやもやしていたわけですが、今は、
雇用は、ビジネスを育てた企業がやってくれればよく、弊社はその足がかりを提供できればよい。
そう考える方が、自分の能力を最大限雇用につなげられるはず。これでウチはSI力を磨くことに専念できる。
という考え方になり、すごく気持ちがラクになりました。
自営SIerのキャリアパスとしては、成功したお客さんに雇ってもらう、もしくは共同経営とか、そういうのもアリなんじゃないかと思っています。新しいチームの教育ビジネスもいいですね。実際まだやったことないのでテキトーなこと言ってますが、要は、自営SIerを始めてみたものの行く先が難しくなったら、その後の道はいくらでもありそうだということを言っておきたかった。
ちなみに自分は体力が続く限りは自営SIerとしてずっとやっていくつもりでいます。まあその、「体力が続く限り」ってところが不安なので、もうちょっと考えます。
以上、こんな長文・駄文読んでくれてありがとうございました。ほか何か質問があればSNS等でどうぞ。
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