自営業でSIerを成立させるためのTips

「1人で請負開発するコツは?」との質問をうけることがあったので、現時点でお答えできることを書いてみました。プログラミング技術的な話はありません。

"山形から来ました自営業でSIerをやってます武田ソフトです" は起業して10期目に入りました。
10年前は、「こういう形態の同業者がこれから増えるはずだ!」 と確信していましたが、・・どうなんでしょうか?

タイトルのような質問を受けることがまれにあるので、自分のまとめのために思い付きで列挙する感じですが、似たようなスタイルを模索している方との会話になればうれしいです。


■ 前提

私自身は、ソフトハウス~大手SIerで10年くらい経験してから起業しています。プロジェクトのスケジューリング・マネージメント、自分が作ったものへの危機管理(臭覚みたいなもの)、などは身に染みついてはいるようです。やばいプロジェクトでも寝込んだりしたことはないので、心身は強い方だと思います。
今さらいうまでもなく、OSS・コミュニティやレンサバ・クラウドさまさまで、こんな時代だからこそ出来てる商売だと思っています。


■ 客層と見積

ターゲットにしているのは、お金があるわけじゃないけどITシステムに挑戦したい、という小規模事業・スタートアップ事業です。山形の企業を最優先しています。
1プロジェクトの価格帯は、数万~100万くらい。1家族くらすために年に何件くらい請けるべきかを考えると、結構ハードかもしれません。

基本的に人月で見積・請求しています。単価は一般的な中堅エンジニアの末端価格程度です。


■ 「安さを提供する」ためにお客さんにネゴること

おそらく弊社は、一般的なSI企業の 5~10分の1くらいの費用で、同機能のシステムを提供できてると思います。
無謀な価格競争をしているわけでも、価格破壊しようとしてるわけでもありません。安さには理由があるんです!

ポイントは3つ。

○ 余計なもの(機能・ドキュメント)は作らない。


 SIerのドキュメントの常識なんて、世間と感覚がずれている。ほとんど必要ない。
 もし必要ならその分お支払ください>じゃあいらない。と、なります
 ※機能の話は後述します。

○ 仕様オーナー・プロジェクトオーナーはお客さんであると自覚・行動してもらう。

 丸投げによる諸問題の防止。
 外部仕様はお客さんが完全に把握してください。
 ちゃんと受け入れテストしてください。
 画面遷移図くらいはお客さんに作ってもらうのが理想。
 操作マニュアル作成はお客さんにやってもらう。

○ 保守契約はしない。

 ランニングコスト不要。そのかわり、
 原則電話禁止、即答・24時間稼働の約束はしません。 
 突発的なトラブルにはベストエフォートで対応。
 サーバの再起動くらいは練習しましょうね。


・・・・と、請負側にはたいへん優しい内容になっていて、お叱りを受けるかもしれませんが、

これらのネゴシエーションがあるだけで、作業量(つまり費用)は3分の1に減ります。で、開発メンバーは私一人(多くても+パートナー1人)、打ち合わせだレビューだの時間もない、体制の維持費用もありません。

要は、1000万+月額保守料で絶対ダウンしない(かもしれない)システムを作ってもらうか、100万ポッキリでもしかしたらダウンする(かもしれない)システムを作ってもらうか。の選択権をお客さんにもってもらうということです。

前者を希望する・希望できるような企業に成長した暁には、どうぞ御社にふさわしいSIerにクラスチェンジしてください。とお客さんには伝えます。
後者を必要としているお客さんはたくさんいるはずですが、それを提供できるSIerは少なく、今のところなかなかウチの変わりを探せないはず。

自分の理想を言えば、もっと、100万円規模に対応できるSIerが増えて欲しい。自分に何かあったときのセーフティーネットになりますし、なにより、もっとITチャレンジに優しい社会になればいいと思っているので。
ソフトウェアもハードウェアもどんどん優しくなっているのに、SIerがまだまだ優しくないと思います。


■ 余計な機能を作らないために

スタートアップで一番大事なのは、「余計な機能を作らない」ことかなと思います。これが意外と難しい。

お客さんもお客さんで、ITチャレンジにテンション高くなってることが多く、躍起になっていろんな便利機能やボタンを詰め込んでくるものです。
「何が余計なのか」 「何が必要なのか」 を判断するためには、プロジェクトの目的や背景、企業理念まで遡ってヒアリングしないとわからなかったりします。

こういうヒアリングは、言ってみれば「起業家の夢物語」にじっくり耳を傾けることなわけですが、得意分野の話をしてもらうことで、お客さんのペースを取り戻してもらうという効果もあります。結果、冷静にITに関する議論が進むことが多いです。

お客さんに作ってもらった外部仕様(紙に描いた画面遷移の下書きみたいなもの)にも、わざと「こんなのいるんですか!?」みたいなダメ出しをして反応をみるときもあります。そこに描いた「ボタン1つに対する思い」をちゃんと確認して吸い上げる。という感じです。その上で、コチラからもっとすっきりとスリム化した案を出していく。

お客さんが「おおっー!」とうなってくれるのは、たいていが ”お客さんの意図するところを1クリックで解決” みたいなときです。実装する側としても、簡単な実装にこしたことないので、両者ホクホク。そういう瞬間を少しずつ積み上げていくのは楽しい。

で、主要と思われる機能の議論が終わったら、「あ、残りはお金かかりそうだから儲かったら考えましょう。」 で、納得の上、ばっさりと機能削除。
最初からこういう会話をする雰囲気を作ることが大事で、同じ投資額でも効果や満足度が全然違ってきます。


■ 相手の「本気度」を探るセンサーはずばり、カネの話

ヒアリングするかしないかの段階でさっさと、「カネいくら用意する気あるの?」という質問をぶつけます(もっと丁寧な言葉ですが)。実際いただける額ももちろん大事ですが、このプロジェクトにどれだけ本気かを見るためです。

もし本気なら事業計画や投資対効果など、起業家としての情熱的な指標を出してくるはずです。これがサクッと出てくるお客さんとは、その実現性に疑問があったり、初期投資が少額でも、まずは付き合い始めてみていいのではないでしょうか。

予算と要件が明らかにかけ離れているケースもあります。「10万でショッピングモールサイト作ってくれ」的な。「できません!」と即決するものもありですが、事業計画がちゃんと出来ていれば、かかった分を数年分割でも払ってくれるはずなので、まずは聞き出しましょう。それで計画も出てこなければ、ごめんなさいします。

「そもそもお金の話に抵抗を持ってしまう人は、起業は控えた方がいい」 とアドバイスしておきます。お金に謙虚に見える人ほど、自分をも周囲をも疲弊させているものです。


■ あまり「本気」ではなさそうなお客さんとの接し方

最初からごめんなさいするケースは、付き合いが長引くだけ、物理的・精神的に赤字になることが確定しているケースです。


 「絶対もうかるiPhoneアプリ開発してほしい、レベニューシェアで」
  →「絶対もうかるのなら、開発費を借り入れてください」
 「社会のために作ってほしい、儲けるつもりはない」
  →「儲けるつもりのないシステムのメンテはできません。」

すぐ判断できるケースはいいのですが、「知人の紹介だから」「ためしに請けてみるか?」など、ごめんなさいしずらい状況の場合。そういうときは、悪い付き合いが長引いてしまう、というケースを防ぐために、次のような手順が有効です。

「いついつまでに、プロトタイプを作成してお見せします。
 その段階で、もし何かのトラブルで、これ以上プロジェクト
 を進められないと判断したら、お代はいただきません。」

と、先にこちらの本気度を見せてしまいます


同時に、お客さんに簡単な宿題を出します(例:写真・データ、名称・ロゴ、サーバーの契約など)。

期日までに宿題をやってくれないお客さんには、こちらから過剰にプッシュすることなく、フェードアウトします。お客さんにも実害はないし文句の言いようもないし、こちらにも負債は残りません。(プロト開発の楽しい時間をお金に変えられなかっただけ、と考える。※詳細後述。)
そのプロトは保管しておきます。フェードアウト後、数年たってから、「あの件を進めたい」と再開してくれるお客さんもいます。


■ タダ働きの許容範囲を決めておく

「まずはビジネスを起こす」 ための心のバッファは用意しておきます。許容範囲もしっかり決めます。

例えば、「2週間分の工賃なら根に持たずに諦められる」など。この2週間分をバッファに、無料プロトや分割払いの計算します。

「10万じゃできないよ、ごめんなさい」で、ビジネスの芽を摘んでしまうか。
「じゃあ10万・頭金で、のこり20万・出世払いね!(・・もしのこり20万入ってこなくても諦められる、キリッ)」で、まずはビジネスを起こさせるか。

はっきりいって、10~20万なんて「ビジネスの数字」ではないと思うのですが、現実問題そのくらいでやるやらないをせめぎ合っているわけです。こういうときに背中をポンと押せるようなSIerでありたい。

ただし、自分のモチベーションには素直になりましょう。やりたくないと感じたらごめんなさいしないと不健康になります。また、許容範囲は絶対に越えてはいけません


■ 雇用などについて、今後の方針

「社員募集してませんか?」という問合せも数年前はありました。そのころはぼんやりと、法人成りや雇用も考えていましたが、今はまったく考えていません。

SIerを大きくすると、みなさんお悩みの「よくない側面」がどうしても現れてしまうが、自分ではそれを解決できる気がしない。あと自分は、自分と家族が大事すぎて、社員の生活を支えるとかそういうことを考えられる器ではない。
でもキャパシティ増やさないと、世間の機会損失を救えない。

・・・などと、もやもやしていたわけですが、今は、

雇用は、ビジネスを育てた企業がやってくれればよく、弊社はその足がかりを提供できればよい。
そう考える方が、自分の能力を最大限雇用につなげられるはず。これでウチはSI力を磨くことに専念できる。


という考え方になり、すごく気持ちがラクになりました。

自営SIerのキャリアパスとしては、成功したお客さんに雇ってもらう、もしくは共同経営とか、そういうのもアリなんじゃないかと思っています。新しいチームの教育ビジネスもいいですね。実際まだやったことないのでテキトーなこと言ってますが、要は、自営SIerを始めてみたものの行く先が難しくなったら、その後の道はいくらでもありそうだということを言っておきたかった。

ちなみに自分は体力が続く限りは自営SIerとしてずっとやっていくつもりでいます。まあその、「体力が続く限り」ってところが不安なので、もうちょっと考えます。


以上、こんな長文・駄文読んでくれてありがとうございました。ほか何か質問があればSNS等でどうぞ。


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